池田「フロイト再考」

https://dspace.wul.waseda.ac.jp/dspace/bitstream/2065/35092/1/ShagakukenRonshu_18_Ikeda.pdf

 

フロイト再考

― もう一つの西欧精神史 ―

池 田 知栄子*

はじめに ― 近代における「知」と「身体」

 私たちの生活は,思想的な次元と密接に結びついている。否,思想とはそもそも,生々しい問題群に満ちた現実と向き合うための,人間精神の高次の機能といえる。昨今論じられる正義や公平性の問題などは,切実な生活上の問題であると同時に思想上の問題でもある。
 今回取り上げるのは,私達の身体と思想の問題である。思想とは,私達の日常生活から生まれるもので,両者は不可分である。しかし,一度抽象の次元に高められ,精緻化された思想は,やはり現実と遊離していく可能性は否めない。身体と思想(知)あるいは物質と精神の関係について考えることは,もしかしたらこの問題に何か示唆を与えうるかもしれない。