20世紀心理学の死生観

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/dls/temp/1_2_4.pdf

20世紀心理学の死生観──フロイトからキューブラー=ロスまで
堀江宗正(聖心女子大学
本講義の目的は、死と生をめぐる心理学的な思想を整理し、論点を確認することである。心理学
的死生観は、ニヒリズム的死生観と宗教的死生観のどちらをも批判し、死の直視と生の意味と価値
の認識を同時に達成し、個人にとっての死と死後生のイメージを心理学的な観点から記述し、また
構築するものである。それは現代人の死生観として有力な選択肢と言える。他方、それと連続しつ
つも区別されるスピリチュアルな死生観(個人主義的な死後生の肯定)も、死に直面する期間が長
期化した現代においては可能な選択肢としてあることを示す。
本講義で、研究の対象となるのは、心理学的な立場から宗教を対象化し、それを通じて宗教に代
替するような思想を練り上げ、かつ死をめぐる心理的問題に言及している著者たちである。具体名
としては、フロイトユングフランクル、キューブラー=ロスなどである。
フロイトの「喪の仕事」と「死の欲動」をめぐる議論からは、次のような死生観を読み取ること
ができる。生は死をはらむ。生は喪失の連続であり、無常である。しかし、だからといって生が無
意味だということではない。生は永遠ではないからこそ意味がある。臨床的には、死を否認すると
抑鬱などの症状に陥ることが観察される。悲しむこと(喪の仕事)はかえって対象の価値の認識に
つながる。