中野明德「S.フロイトの性欲論」

■中野明德「S.フロイトの性欲論」
フロイトのリヒドーの理論の概要が手際よくまとめられている。
最後の症例ドラの考察に注目しよう。
 
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S.フロイトの性欲論
―幼児性欲と転移の発見―
中 野 明 德

http://ir.lib.fukushima-u.ac.jp/dspace/bitstream/10270/3743/1/19-159.pdf

 

S.フロイトの性欲論
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*a 福島大学総合教育研究センター・教育相談部門
 S.フロイトの性欲論はヒステリー論と夢理論から編み出された。彼はヒステリーを探究するなか
で,神経症を生み出すほどの心的外傷には性的要因が絡んでいることを見出し,夢理論では,夢が
現在と無意識の過去をつなぎ,その原動力は見果てぬ願望であることを知った。精神分析理論の中
核的な『夢判断』と並ぶ『性欲論三篇』には,フロイトのフリース体験が影を落とす。彼の関心は
エディプス・コンプレックスの起源を追究した幼児性欲だけではなく,人間は同性も異性も性対象
として選択できるという両性性であり,ナルシシズム的対象選択でもあった。精神分析技法上で
一大発見である転移は,夢と同じように現在と過去の愛情生活を結ぶ強烈な現象であり,性欲動の
エネルギーであるリビドーが幼児性欲に固執するからこそ発見できた。彼の性欲論は自我の発達論
や構造論にも影響を与えたことから,今日では精神-性的発達論と呼ばれている。
〔キーワード〕性欲動  リビドー  両性性  ナルシシズム的対象選択  幼児性欲  転移